インボイス制度が始まって早やひと月が過ぎようとしています。
そんな中、フリーランスや個人事業主の皆様から、インボイス制度に関する様々なお問い合わせが寄せられております。
インボイス制度について
その中で一つ気になったものがございましたので、ご紹介させていただきます。
それは、今までに考えてもいなかったような問い合わせで、インボイス制度がスタートしたからこそ出てきたのかも知れない問い合わせでした。
その問い合わせとは、「インボイス制度が始まったことで、免税事業者は請求書を出す際、消費税の記載をしてはいけないのか?」と言うものでした。
これは、よくよく聞いてみると、令和5年10月1日、インボイス制度開始と同時に、インボイス登録をしなかった免税事業者が、この日を境として、消費税に関する一切の取引から除外されたとの認識を持っているものでした。
要するに、インボイス登録を行わなかったことで、消費税を取引相手に請求できないものだと勘違いしておられるからだと言うことです。また、制度が始まったからこそ、こう言った間違った認識が生じるのだということで、10月1日以降、免税事業でいる事業者は、消費税を請求してはいけないと考えている方が少なからずいらっしゃると言うことです。これは、意外なことでした。
つまり、消費税がどのような仕組みの税金なのかを国民の大半の人たちは理解していない実態について、また、反対に国の側からすれば、そこんところを曖昧にすることで消費税は国民が物を買ったり、サービスを受けたりしたときに掛かる税金だと思い込ませられたところに原因があると考えられます。
実は、消費税とは消費者が支払うときに発生する税金ではないというところをご理解いただく必要があると思います。まさに、消費税のみならず、ありとあらゆる法規制に対する日本の官僚が使う常套手段であると考えられます。
そこで今回は、インボイス制度を理解する上で必要な消費税の成り立ちとそもそもの仕組みについて、少しお話しさせていただければと思います。
「消費税の歴史」をさかのぼるとわかること
消費税の始まりは、皆さんご存じのとおり1989年(平成元年)からになります。当時、竹下内閣が世論や野党の反対を強引に押し切った形で消費税が導入されました。これが消費税という新しい税金の始まりです。
消費税が導入されるまでの道のりは非常に長く、1979年(昭和54年)大平内閣の時が始まりで、その後、1984年(昭和59年)中曽根内閣と、二度にわたって世論の大反対があり消費税導入に失敗していたこともあり、「年間課税売上高3,000万円以下まで免税」など消費税3%の導入には中小企業に対し、かなりの配慮を行った内容が盛り込まれて成立に至っております。
この発足当時の免税が今回のインボイス制度に大きく関わってくる話になります。
その後税率は、1997年(平成9年)に5%、2014年(平成26年)に8%、2019年(令和元年)ついに10%に至ったのです。
また、この間に、2011年(平成23年)の税制改正により年間課税売上高3,000万円を1,000万円に引き下げられ、今回のインボイス制度導入につながってくるのです。
今までは、年間売上額が1,000万円以下のフリーランスや個人事業主は消費税の納付が免除されてきました。その背景には事業者が正しく消費税を納めるための前提となる帳簿の作成が不可欠であり、その帳簿作成の負担が事業者に重すぎるという観点と、当然混乱を招くことが予想されていたため免除という結果に落ち着いたのだと考えられます。
しかし、現在、インボイス制度によって当時の判断がリセットされ、これまで免税扱いだった小規模事業者が課税事業者となり消費税を負担するか、もしくは免税事業者のまま留まることによって取引業者から排除されるリスクを受け入れるかの二者択一が迫られたのです。
年間売上が1,000万円以下のリーランスや個人事業主にとって、売上の10%の負担増は収入に直結した死活問題であることは言うまでもないことです。
昨年末に出された税制改正大綱では、騒ぎを治めるためなのか、経過措置として課税事業者に変更した場合、軽減措置がありますが、3年間の時限立法であり、いずれ消費税を支払わなければならなくなることには変わりはございません。
つまり、今回のインボイス制度導入は、消費税導入当初の中小企業に対する“お目こぼし”をご破算にするという当局の判断によるものだと考えられます。
そもそも消費税とはどのような税金?
まず、消費税法から見てみましょう。→ 消費税法は国税庁ホームページ「消費税法」をご覧ください。
消費税法第五条の納税義務者において、「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。)及び特定課税仕入れ(課税仕入れのうち特定仕入れに該当するものをいう。)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。」と記載されております。
つまり、納税義務のある者は、事業者であり、とくていの取引を除いては、売ったものには全て消費税が掛かることと示されております。
また、第九条の小規模事業者に係る納税義務の免除におきましては、「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。」となっており、売上高1,000万円以下の事業者は消費税を納める義務を免除するとされている。
これでお分かりのとおり、消費税は消費者が支払う税金ではなく、あくまでも事業者(事業を行っているもの)が納める税金であり、特例を除く全ての取引に掛かってくるものであると法律で定められております。また、事業者のうちで、売上高が1,000万円以下の事業者は消費税を納める義務を免除するとされているため、免税事業者は取引上の売上については、消費税が掛かり、その消費税は納税しなくても良いとなっております。
そこで、最初の問い合わせの話に戻らせていただきますと、売上に対しては特例を除けば全てに消費税を計上する義務があり、売上高1,000万円以下の事業者であれば、納税を免除される権利を有することになります。
このあたりの詳細につきましては、別のブログにて説明させていただこうと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
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