企業で生成AIを利用する際、ガイドラインとともに必要なのが社内規定になってきます。ガイドラインは従業員が生成AIを利用するためのシ指針であり、あくまでもルールを守るための注意喚起でしかありません。しかし、社内規定としての「生成AI利用規定」では、規則を守るためのものであり、場合によっては罰則も含まれます。
つまり、生成AI利用のためのガイドラインと社内規定は、一対のもので企業が社内で生成AIを利用する際には、この2つを作成して運用する必要があります。
そこで今回は、前回の「生成AI利用に関するガイドライン」に続き「生成AIに関する社内規定の作り方」について少し解説をさせていただきたいと思います。
生成AIの社内規定を作成する上での注意点
生成AIを企業で適切に活用するためには、ガイドラインをベースにした明確な社内規定を策定することが非常に重要となってきます。以下は、生成AIの社内規定を作成する際に必要となる具体的な項目になっておりますので、社内規定を作成する際の参考にしてください。
現状の評価とニーズの把握
まず、組織内での生成AIの利用状況を評価し、どのようなニーズがあるのかを把握します。これには、現在のAI利用の実態や、社員が抱える不安(情報漏洩や著作権侵害など)を理解することが含まれます。
ガイドラインの基本構成を決定
社内規定には以下のような基本的な要素を含める必要があります。
①利用範囲 ⇒ どの業務で生成AIを使用するかを明確にしましょう。
②データ管理とプライバシー ⇒ 機密情報を扱う際の注意点や、どのデータをAIに入力して良いかを定めましょう。
③知的財産権の取り扱い ⇒ 生成されたコンテンツの権利が誰に帰属するのかを明確にしましょう。
リスク管理と禁止事項の明示
生成AIの利用に伴うリスクを管理するためには、以下のような禁止事項の設定が必要になります。
① 法律、金融、医療などの分野での利用禁止。
② AI生成物をそのまま外部に公開することの禁止。
教育とトレーニングの実施
社員が生成AIを適切に利用できるよう、教育プログラムを実施しましょう。これには、生成AIの基本的な知識や活用方法、リスク管理の方法を含めたカリキュラムを組むことが重要になってきます。
定期的な見直しと更新
生成AIの技術や利用状況は常に変化するため、社内規定も定期的に見直し、必要に応じて更新する必要があります。これにより、最新の情報や技術に基づいた規定を維持することができます。
具体的な事例の参照
他社の成功事例やガイドラインを参考にすることも有効な方法となります。例えば、前回ブログで紹介いたしました日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する生成AIの利用ガイドラインを基にして、自社に合った内容に修正することも一つの方法かも知れません。
これらの事項を押さえることで、生成AIを安全かつ効果的に活用するための社内規定を策定することができます。
生成AIの社内規定の作成手順
前項でもお伝えしたとおり、生成AIを企業内で適切に運用するためには、明確な社内規定を策定する必要があります。以下は、生成AIの社内規定を作成するための具体的な手順になりますので、作成をお考えの方は、是非ご参考にしてください。
目的の設定
社内規定の目的を明確にする必要があります。生成AIの導入によって、業務の効率化やコスト削減、また、クリエイティブな作業の支援など一定の期待する効果を生むことを目的として記載しましょう。目的を明確に設定することで、規定の重要性を社員に理解させることができます。
利用範囲の定義
生成AIをどの業務で使用するかを明確にしましょう。具体的には、以下のような業務が考えられます。
① 報告書、プレゼンテーション資料などの文書作成
② 市場調査、顧客分析などのデータ分析
③ 広告文、SNS投稿などのマーケティングコンテンツの生成
④ Frequently Asked Questions(FAQ)の自動応答などの顧客対応
利用禁止事項の設定
リスクの観点から特定の業務や情報に関しては、生成AIの利用を禁止する必要があります。具体的には以下のような内容が該当します。
① 法律、金融、医療などの機密性の高い情報を扱う業務での利用禁止
② 個人情報や機密情報の入力禁止
③ 他者の著作物を無断で使用することの禁止
データ管理とプライバシー
生成AIに入力するデータの管理方法を定めましょう。特に、個人情報保護法に基づく取り扱いや、データの保存場所(国内外のサーバー)についての規定を設定する必要があります。また、機密情報を含むデータは、事前に上司の承認を得るような仕組みを作っておくことも必要です。
リスク管理と教育
生成AIの利用に伴うリスクを管理するため、以下の措置を講じましょう。
① 定期的なリスク評価を実施すること
② 社員に対する教育プログラムを実施し、生成AIの利用方法やリスクについて理解を深めること
ガイドラインの周知と遵守
策定した規定を全社員に周知し、遵守するように促しましょう。具体的には、社内研修やマニュアルの配布を行い、社員がいつでも参照できるようにする必要があります。
定期的な見直し
生成AIの技術や利用状況は常に変化するため、社内規定も定期的に見直し、必要に応じて更新するように心がけてください。これにより、最新の情報や技術に基づいた規定を維持継続できます。
参考資料の活用
前項と同様に、他社の成功事例や、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する生成AIの利用ガイドラインを参考にすることで、自社に合わせた規定を効率的に作成できます。
これらの手順を踏むことで、生成AIを安全かつ効果的に活用するための社内規定を策定することができます。
まとめ
生成AIの利用に関する社内規定を作成する際には、まずAI技術の特性とその利用目的を正確に理解することが重要になってきます。利用規定はAIの出力に対する倫理的責任と透明性を重視し、利用者がどのような範囲でどのような目的に基づいてAIを使用するのかを明確に定義する必要があります。また、データの取り扱いについては、特に個人情報保護や機密性のあるデータに配慮し、適切な管理体制を整えることが求められます。さらに、生成AIによって生成されたコンテンツの著作権や知的財産権の扱いについても慎重に検討し、第三者の権利を侵害しないよう明確に規定しなければなりません。そして、不正確な情報や誤解を招く表現、差別的・攻撃的な内容の生成を禁止するためには、禁止行為についても詳細に記載することがとても重要になってきます。これらの規定は、技術の進展や法規制の変更に応じて見直しが可能なように定期的な改定手続きを含むことで、継続的な改正が必要とされます。このように、生成AIの利用に関する社内規定を作成する際には、多方面の観点から利用基準をしっかりと定めることで、公正かつ安全なAI活用を支援する規定となるよう注意を払うことが重要になります。